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千葉地方裁判所八日市場支部 昭和41年(ワ)52号 判決

原告

高橋はつ

ほか二名

被告

武井房頼

ほか一名

主文

被告等は連帯して原告高橋はつに対し金二〇万円、原告高橋千恵子、同高橋美津江に対し各金一〇万円及び各これに対する昭和四一年九月一五日から完済まで年五分の割合による金員をそれぞれ支払え。

原告等その余の請求を各棄却する。

訴訟費用は原被告等各自支出分につき、当該原被告等の各負担とする。

事実

原告等訴訟代理人は「被告等は連帯して、(1)原告高橋はつに対し金二、八九五、三六六円、(2)原告高橋千恵子同高橋美津江に対し各金二、六四二、五六八円あて及びこれに対する訴状送達の翌日(昭和四一年九月一五日)から完済まで年五分の割合による損害金を各支払え。訴訟費用は被告等の負担とする。」との判決並びに仮執行の宣言を求め、その請求原因及び被告の主張に対し次のように述べた。

一、訴外亡高橋武夫(当時四七才。大正七年一月一三日生以下武夫とす。)は、次のような交通事故発生により、昭和四〇年五月三〇日午後八時五七分死亡し、原告等はその相続人である。

(一)  事故発生時、昭和四〇年五月二九日午後六時二七分頃。(天候霧雨)

(二)  同発生地、

(1)  八日市場市籠部田ハの七八二地先(布施自動車修理工場前)

(2)  道路名称、国道一二六号線(アスフアルト舗装)

(3)  道路の状況、事故現場の手前左側々溝付近は水溜りとなつていた。

(三)  事故車、車種、被告武井青果物株式会社所有四トン貨物自動車。登録番号、千一な七七四号。

(四)  運転者、被告武井房頼(以下房頼とす。)。

(五)  被害者の事情、被害者武夫は、八日市場駅より八日市場市平木三八〇三番地の一の自宅に向つて、原動機付自転車を運転し点灯して左側通行し、本件事故現場に進行中であつた。

(六)  事故の態様、

(1)  房頼運転の右貨物自動車が後退し武夫に追突し転倒させた。

(2)  その具体的内容については、武夫が事故現場に近づいた際、道路左側の側溝が水たまりとなつていたので、それを避けて中央センターライン近くを東に向つて進行すると、房頼の運転する四トン積トラツクが布施自動車修理工場より一二六号線国道を横切つて後退して来たので、武夫は更に右側に出て通過しようとした。その時房頼はその運転する貨物自動車を訴外布施やす(以下やすとす)のストツプストツプという制止をきかず、道路右側一杯に後退し来り、これを避けようとした武夫に左横から追突接触し、武夫に左側頭部頭蓋骨々折兼脳挫傷の傷害を与え、直ちに九十九里ホーム病院に入院治療を受けたが既に意識がなく、翌日死亡するに至つたものである。

二、帰責事由

被告等は次の事由に因り、本件事故より生じたる原告等の損害を賠償する責任がある。

(1)  房頼は、被告武井青果株式会社(以下被告会社とす)の業務に従事中、右会社所有四トン積トラツクの修理完了し、車を布施工場に引取りに来て、その運転中左側後方不注視により、無謀後退し、誘導者のストツプストツプとの注意を無視して停車しなかつたため、武夫に追突接触したものであり、未熟な運転による操作不適当により、武夫を傷害死亡せしたものである。そもそも自動車は歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは横断、転回、後退等してはならないことは道交法第二五条の二に明規するところで、本件国道は自動車専用道路と称すべき国道一二六号線であり、現場は屈折し、交通頻繁にして特別に注意して操車すべき要注意場所である。(同法第七五条の六)而して同法第五三条によればかかる場合、手、方向指示器又は灯火等により合図をすべきことを規定されているのに、房頼は何等の合図をなさず、全く漫然と後退し本件事故を惹起せしめたものである。しかも四トン車といえばダンプカー、バスに準ずるもの、これに匹敵するもので、後退の場合は特に後方注視義務が重要で運転者は特に細心の注意をもつて自車の直後に危険がないかどうかを十分に確認した上でなければ後退すべからざるものである。

(2)  被告会社は、本件事故貨物自動車の保有者で、その自動車を引取るため房頼を使用し、運転せしたものであり使用者として自賠法第三条、民法第七一五条により不法行為責任を有するものである。

三、損害について

(一)  本件事故に因り生じた原告等の損害は左の通りである。

(A)  亡武夫分

(1) 金一〇、二一四円 医療費

(2) 金八四、〇一〇円 葬祭費

(3) 金五、一九一、二〇〇円 得べかりし利益の損失

右は被害者武夫が生存したとして、これをホフマン式計算により財産的損害を算式すれば左の通りである。就労可能年数十六年(四七才死亡)右年数に対応する係数一一・五三六月収四五、五〇〇円(月給三九、〇〇〇円、賞与年間二回七八、〇〇〇円月額六、五〇〇円)生活費等経費月額八、〇〇〇円。

(45,500円-8,000円)×12(ケ月)×11.536=5,191,200円

(4) 金一、〇〇〇、〇〇〇円 慰藉料

右は武夫が本件交通事故のため洋々たる前途を失い、妻子を残して死亡するに至つた同人の肉体的、精神的苦痛に対する慰藉は金一〇〇万円を相当とする。

以上計金六、二八五、四二四円

(B)  原告等三人分

金三、〇〇〇、〇〇〇円 慰藉料

右は原告はつは、武夫の妻として最愛の夫を、原告千恵子、美津江は最愛の父を失い、その精神的苦痛に対する慰藉料は各一〇〇万円を相当とする。

(二)  損益計算、右損害のうち被告会社より、

(1)  金一、〇〇七、七一九円 自賠保険金

(2)  金五〇、〇〇〇円 見舞金兼損害金内金

(3)  金三〇〇、〇〇〇円 損害金内金

計金一、三五七、七一九円の支払を受けている。そして右金一、三五七、七一九円を、武夫の損害金、得べかりし利益金、慰藉料等の合計金六、二八五、四二四円より差引くときは、残額金四、九二七、七〇五円となり、その三分の一金一、六四二、五六八円が原告等三名の武夫よりの相続分となる。

又原告はつは、亡武夫の死後左の通りの物的損害を負担している。

(1)  墓地代 金五〇、〇〇〇円

(2)  仏壇費 金八五、〇〇〇円

(3)  新盆供養諸費 金一九、七九八円

(4)  石碑建立費 金九八、〇〇〇円

右計金二五二、七九八円

よつて原告等が被告等に請求する損害賠償額は左の通りである。

原告はつ分二、八九五、三六六円

原告千恵子、同美津江分各金二、六四二、五六八円

しかるに被告等は原告等の右損害金の支払請求に応じないので、請求の趣旨通りの判決を求めるものである。

四、被告等の主張に対し

(一)  房頼には重大な過失がある。即ち、交通極度に頻繁な国道に適当な誘導者なく、全然車馬の往来を注意確認せず突然後退し、しかも誘導に当つた布施やすは未熟者でその指示も適切でなかつたので、ストツプをかけられて尚一・八米も後退している。

(二)  武夫は無過失であつた。即ち当時武夫の速度は約二四粁程度で徐行というべく、前方を完全に注視して進行し、殊に被告車を避けて進行しており、道交法違反の運転行為は絶無であつた。

(三)  武夫には何等過夫がなく、従つて被告等主張の無過失、無責任、更に武夫の過失を前提とする過失相殺の主張はその理由がない。

被告等訴訟代理人は「原告等の請求各棄却、訴訟費用原告等負担」の判決を求め、答弁並びに主張として次のように述べた。

一、請求原因第一項中(一)ないし(四)は認める。(五)は武夫が点灯していたことは不知であるが、本件現場を進行中であつたことは認める。(六)は傷害の部位程度並びに死亡の事実は認めるが、その余は否認する。同第二項以下は被告会社から合計金一、三五七、七一九円の見舞金等を支払つたことは認めるも、その余は全て否認する。

二、房頼には本件事故発生につき過失はなく、従つて被告会社にも何等の責任はない。

(一)  房頼は本件自動車を布施工場内から国道一二六号線道路上に出すため、工場主の妻訴外布施やすの誘導により後退を始め、やすの指示により道路センターラインを越えた地点で停車した。当日当時の天候は小雨で、路面は滑走しやすい状況にあつたのに、武夫は雨具をつけず、前こごみになつて前方への注視を怠り、ブレーキもかけず被告車に衝突したものである。

(二)  本件事故発生につき、武夫と、房頼のそれぞれ注意義務の存在と、その遵守の有無については、

(1)  房頼の車両後退についての注意義務は(イ)法律上としては、道交法第二五条の二(横断等の禁止)、道交法第五三条(合図)であり、(ロ)条理上、慣習上、実験則上としては、補助者による後方安全確認である。

(2)  武夫の本件現場における注意義務は、(イ)法規上としては、道交法第四二条(徐行すべき場所)であり、(ロ)条理上、実験則上としては、前方注視確認である。

(三)  房頼には注意義務の配分(危険の分配、許された危険)の理論よりしても過失がない。即ち、

(1)  房頼は、原告主張の如く道交法第二五条の二により車両等の正常な交通を妨害するおそれがある時は後退してはならないとすれば、たとえ車両の交通が途断えても、いつ通行車両があるかもしれない交通頻繁な道路においては、絶対横断も出来なければ後退も出来ないという不合理なことになる。

(2)  本件現場において、房頼はやすの誘導によつて一般的に要求されておる定型的な注意義務をつくして後退し停車したものであるから、武夫が第二次的に注意義務を遵守し、前方を注視して速かに被告車を発見し徐行の上通過するなり、或は一時停車するなりなせば、本件事故は避けられたもので、房頼が武夫にそのような行動に出ることを期待することは、許されるものである。

三、仮りに、本件事故につき被告房頼に過失があつたとしても、武夫に重大な過失があることは、前項のとおりであり、結果予見、結果回避の義務、危険分配の理論からみても、本件損害賠償額決定に当り当然参酌相殺さるべきである。

(証拠関係)〔略〕

理由

一、本件自動車事故が、原告等主張の日時場所において、被告房頼運転のトラツクと武夫運転の原付自転車との間に発生し、よつて武夫がその主張のような部位程度の傷害を受けて、翌日死亡するに至つた事実については当事者間に争のないところであり、〔証拠略〕によつても、右の事実関係は認められるところである。

二、本件事故がどのような状況と経過により発生したかの事実関係につき考えてみるに、〔証拠略〕によれば、

(一)  房頼は、布施自動車修理工場敷地内から車幅燈の取付等の修理を了つた本件トラツクを運転して国道を西方に向つて帰るため、一端トラツクを国道上に出すべく道路東方に向けて後退を始めたこと、その後退に当り右工場主の妻布施やすがその誘導に当つたこと、布施やすは本件事故発生地点から約四〇米位西方の道路側端上にあるカーブミラーに、武夫運転の二輪車のライトが写つたのを認め、直ちに房頼にストツプをかけて後退を停止させたこと、右被告車のその時の停車位置は、国道上に斜に後退して本件道路南側路端から約二米位の位置に、被告車の車体後端があつたこと、

(二)  武夫は、国鉄八日市場駅から小雨の降つている国道上を東方に向つて自動二輪車で帰途につき、事故現場はその道路の幅員とその変化及びカーブの状況、時刻、天候の関係上可成りうす暗くなつていたこと、武夫は自車を運転進行し右カーブを回つて直線路上に出て、本件衝突地点手前約二〇米附近の左側には降雨のため道路に水たまりが出来ていたためか、それをさけて少くとも右道路上センターラインに近い処を東進していたこと、そして何等減速或はブレーキをかけないで、そのままの速度少くも時速三〇粁以上(この速度の点は後記の通りである。)で進行し、衝突地点から約一〇米位前方からセンターラインを越えて斜方向に道路右側端へ進行して来て、被告車の後退停止している後部車側面に衝突したものであること、

がそれぞれ認められるところである。

三、武夫と被告房頼の各運転上の経過及び過失の有無とその大小につき考えてみるに〔証拠略〕によれば次のように判断される。

(一)  武夫は、八日市場駅から小雨の降つている国道上を東方に向つて自動二輪車で帰途につき、雨具を持つていたのに着用せず、帰途を急いでいたと思われ、丁度本件事故現場にさしかかつたが、事故現場はその道路の幅員の変化とカーブの状況、天候、時刻の関係上可成りうす暗くなつていたこと等からだけでも武夫は自車を運転進行するに当り、十分前方注意して安全運転をなすべく、殊にカーブを回つて直線路上に出た際は前方を十二分に注視している必要があることは勿論、自車のスピードとカーブと道路幅員との関係上、往々にして自車がセンターラインを越えてカーブを回つて進行し、そのまま直線路上を進行し勝ちなことや、その直線路上で本件衝突地点手前進行方向の道路左がわには雨のための水たまりが出来ていたためか、それをさけるために武夫は少くとも右道路上センターラインに近い処を東進していたこと、そして前方を十分注意して注視していで、武夫の時速が二七、二八粁位であつたならば時間的にも距離的にも、当然衝突を回避するに十分な余裕があつたと判断されるのに、本件事故が発生したことは、第一武夫が前方注視義務をおこたつていたこと、そして被告車が武夫の進行路上前方でセンターラインを越えて道路右側端と被告車の後部端との間かくが約二米位しかあいていなかつたのに拘らず何等減速、ブレーキをかける等事故発生に対して執るべき措置をとらなかつたこと、本件事故現場の西方道路上に設置してあるカーブミラー附近より西方は広いが、右カーブミラーのある附近から東方へは道路の幅員がカーブと共に急に狭くなつていて、西方から東方へ自動車で進行する者は一般的に考えてみても、カーブで見とおしが悪く、その上急に道路の幅員が狭くなつているので一度相当程度減速して進行することが必要で、さもないと往々にしてセンターラインを越えてカーブしながら進行する結果になること、当日の当時頃は小雨が降つていたこと、それに時間的にもうす暗く、ライトが必要であつたこと、従つて十二分に前方を注視しながら運転する必要があり、且つ雨で路面がぬれているので、ややともするとスリツプする可能性があり、まして二輪車にはその程度が大きいこと、本件衝突地点から西方約四〇米以上ある道路のカーブをすぎて直線となる点まで進行して来れば、前方を注視して運転している以上、被告車が進行道路上に斜に出ていて、自己の進路に障害物となつている事実が当然認識されていた筈であるから、武夫が前方を注視せず被告車の存在に気付かず漫然と運転していたか、被告車が当然に武夫の進路から前進後退等して、その進路の障害とならないものと軽信したか、或は武夫の運転速度が原告等主張の時速より更により速く、被告車発見が遅かつたことと相まつて被告車との衝突を回避出来なかつたかであるとしか考えられないこと、又武夫運転の車は急停車の措置を執つたとみらるべき点もなく、或は武夫はそのまま運転を継続して被告車の後部を廻りながら道路南端と被告車との間を通過し得るものと軽信したかであるとしか考えられない。従つて武夫の運転方法は当時の状況から判断して、当然執るべき減速、前方注視、前方確認等安全運転義務違反があり、このことは道路上を自動車等が往来する際に、当然運転車として守るべき互譲の方法と信頼の原則に反し、自己の運転方法、自己の運行のみが最良最優先するとの独断的な偏見を捨てて、相互に交通の安全を確保する義務に反し、交通法規を貫ぬく原則に違反していると断ぜざるを得ないところである。

(二)  一方被告房頼についての過失を強いて求めるならば、房頼は布施やすの誘導により一度バツクして道路上に被告車を出したのであるが、前方から武夫運転の車が進行して来たのを認めた補助者布施やすのストツプの合図に従つて直ちに停車した際、被告車のボデイーが大きく殆んど道路一杯になつて、東西の道路の交通をさまたげていることに思をいたし、直ちに警音器をならして武夫の注意を促し、旧位置である布施工場敷地内に進行さして、少くとも武夫運転の車の進路前方を少しでも妨害しないようにしておくべきであつたことである。即ち房頼は、ストツプと同時に直ちに被告車を旧位置である布施工場内に進行させて、武夫運転の車の進路を少しでも幅広く開けてその進行を容易にする努力をなすべきであつたのに、これを怠つた過失があつたことになる。

(三)  本件事故は、房頼運転のトラツクが急に後退して来て、一方的に武夫運転の車にその側面から衝突したために発生したものであるとの原告等の主張事実は、これを確認するに足る証拠がなく、右主張は採用し難い。又原告等主張のような武夫の時速による運転がなされていたならば、十分に本件衝突を回避し得たか、少くとも武夫の受傷がより軽度のものとなる可能性があつたと考えられることからしても、武夫の時速は少くとも三〇粁以上であつたと推認されるところである。

四、以上認定の事実から、本件事故発生につき、武夫には大きな過失が認められるに反し、被告房頼には小さな過失だけしか認められないことになる。従つて被告等の過失相殺の主張を考慮し、本件事故から生じた損害の配分についても、右の過失の大小によつて認定すべきものである。よつて当裁判所の判断し認定するところは次のようになる。

(一)  原告等が、本件事故による損害の補填として金一、三五七、七一九円の支払を受けている事実は当事者間に争のないところである。

(二)  原告等の本訴において訴求する損害の内、武夫の死亡による不可避的な、直接的な又慣習的な損害とみらるべきものとして、

(1)  医療費 金一〇、二一四円

(2)  葬祭費 金八四、〇一〇円

計金九四、二二四円

(3)  墓地代 金五〇、〇〇〇円

(4)  仏壇費 金八五、〇〇〇円

(5)  新盆諸費 金一九、七九八円

(6)  石碑建立費 金九八、〇〇〇円

計金二五二、七九八円

合計金三四七、〇二二円

が〔証拠略〕によつて認められる。

(三)  〔証拠略〕によれば、武夫の得べかりし利益としては、月収金四五、五〇〇円が認められ、右収入から同人の必要生活費等として金一五、五〇〇円を控除するのが相当であるから、原告等主張の算式に当てはめてみると、

(45,500円-15,500円)×12×11,536=4,152,960円

となり、更に武夫自身の慰藉料として金一、〇〇〇、〇〇〇円を加算すると金五、一五二、九六〇円となる。

(四)  右(二)と(三)の合計金五、四九九、九八二円は、武夫の前示過失、被告等の過失相殺の主張を考慮するときは、原告等がすでに支払を受けている金一、三五七、七一九円を以て満足すべきものであると認定するから、その余の請求は失当である。

(五)  そうだとすると、原告各人の被告等に対する本訴訴求額金一、〇〇〇、〇〇〇円の各慰藉料の点につき考えてみるに、被告房頼にも前示のような過失が認められ、従つて原告等に生じた損害の一部を負担させるのが妥当であるから、その額につき考えてみるに、原告等が受けた精神的な苦痛と諸般の事情を参酌してみて妻である原告はつには金二〇万円、子女である原告千恵子及び美津江には各金一〇万円あてがその慰藉料として相当であるがその余は失当である。

(六)  被告会社が、本件トラツクをその事業の用に使用していた事実は、同被告の争わず自認するところで、自賠法第三条による無過失の立証がない限り、房頼の過失によつて発生した本件事故に対し、その損害の賠償責任があるところ、被告房頼と被告会社とは本件損害賠償金の支払につき連帯してその支払に当るのが相当であると認められるところである。

五、果して以上のような事実認定と、損害賠償額の算定並びに認定が妥当であるならば、原告等の本訴請求額中、被告等は連帯して原告はつに対し金二〇万円、同千恵子、同美津江に対し各金一〇万円あて及び各その遅延損害金の支払義務があるが、原告等その余の請求はその理由がなく、棄却さるべきもの、仮執行宣言はその必要なしと認める。よつて民事訴訟法第八九条により主文の通り判決する。

(裁判官 秋本尚道)

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